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2006年 10月 28日
筋かいの変遷
以前、Yahooのオークションで2冊の古い住宅建築のための本を手に入れました。
2つの本の耐震に関している項目について比較してみました。
しかし、耐震の項目はまだ無く、唯一「筋かい」についての項目がありました。
「住宅建築設計の知識」は、昭和10年発行、関東大震災の後、また「家の出来るまで」
は、昭和29年発行、建築基準法が昭和25年に制定された後です。
以下、「筋かい」の項目を抜粋します。

■「住宅建築設計の知識」 江口 義雄 著
筋かいの変遷_c0087349_5541883.jpg 東学社 昭和10年11月18日発行  昭和12年1月27日改訂
筋 違
大震災後この筋違の事がやかましく論ぜられる様になり、必ず壁間には取り付ける様になった。
即ち耐震的で、耐暴風的であるからである。筋違はなるべく、四十五度に取付くべきで、斜めに取り付けさえすればよいと言う訳のものでないから、注意してなるべく多く取り設ける事が肝要である。(第二十六図参照)
筋かいの変遷_c0087349_673042.jpg

■「家の出来るまで」 西川 驍・高田 秀三・疋田 玄二郎 共著

筋かいの変遷_c0087349_5561429.jpg主婦の友社 昭和29年7月25日発行
昭和38年11月30日20版発行
筋違の取付
金物補強と同様に、建物を耐風、耐震的にするため使う構造材で、骨組の隅から隅へ、斜かたすきに、ときとしては水平にも取りつけるものを筋違(すじかい)といいます。(図37)は、筋違の有効な取付法を示したものです。


図A は四角な柱だけの場合、一方的なカに対して簡単にゆがみますが、C のように、力に対抗する方へ斜の棒(筋違)を張ると、有効な支えとなります。反対にB のように、同方向へ取りつけると、かえって逆作用をして建物を弱めます。この基本的な理由から、前後左右の風や地震力を考えて、筋違の働きを平均させて取りつけなければなりません。
仮にA′のように左右の風を想定しますと、C の原理で、左右から筋違を取りつけ、柱間が奇数のときは図B′のように、中央でX 型にする必要があります。
筋違の角度があまり急では役立ちません。C′のように、45°~60°が有効な角度です。もし70°にでもなる場合には、(写真36)、(図38)のB、D のようにします。筋違を柱の途中に取りつけたり、途中で継いだものを見かけますが、大きな地震などには効力を発揮しません。
筋かいの変遷_c0087349_605546.jpg

――略――
筋違の厚さ
大壁の場合、建物の程度によって、柱の三つ割り、二つ割り、同じ角のものと使い分けます。
割ったものを使う場合には、その両端は欠き入れ、大釘打またはかすがい打(図38)・・・略。
柱と同じ大きさのものを使うときは、ボールト締か箱金物を用います。最近は、壁下地の木摺
(きずり)を斜めに打ちつけて、筋違の役目をさせるものもありますが、耐震上有効でも、手間と材料を費やします。
筋かいの変遷_c0087349_611121.jpg

――略――
真壁の場合、取付箇所の両端は三寸釘3本以上を打つことになっていますが、むやみに多く打つと、かえって弱くなります。・・・・・略
筋かいの変遷_c0087349_612716.jpg

以上抜粋

共通点としては、2つの本とも筋かいの角度についての明記があります。
「住宅建築設計の知識」昭和10年発行では45°、「家の出来るまで」昭和29年発行では
45°~60°が有効な角度としています。ただし、後者は角度にこだわるあまり、筋かいの
取付けを「(写真36)、(図38)のB、D」の形式を推奨していますが問題と思われます。
上記文でも「筋違を柱の途中に取りつけた・・・地震などには効力を発揮しません。」との
記載あり矛盾しています。(以前、耐震調査を行なった昭和40年頃の建物に、この工法が
用いられていましたが、筋かいとしては考慮に入れませんでした。また階高が高い建物の
平面の柱間が半間(909㎜)の筋かいは注意が必要です。)
平面での斜め耐震壁についてもXY方向に分割する場合、上記角度の考慮が必要です。
筋かいの取付け金物は、釘打またはかすがいの使用が記載されていました。
また、この頃から壁下地の木摺(きずり)が出てきました。(現在、耐震上考慮に入れる。)

by core1808 | 2006-10-28 06:12 | 地震や耐震の話


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